司法書士 石井 一寛(石井・小島合同司法書士事務所) > 記事一覧 > 家族信託と成年後見(任意後見、法定後見)の違い~
■成年後見制度とは?
成年後見制度とは、判断能力の低下した成人を保護するために、本人の行為能力(契約等の法律行為を行う能力)を制限し、後見人等のサポートを認める制度をいいます。成年後見制度には、法定後見・任意後見の2種類があります。
●法定後見
法定後見は、既に本人の判断能力が低下しているときに利用される制度で、本人の判断能力低下の程度に応じて3段階に分かれている点に特徴があります。
本人が判断能力を喪失したと認められるときは、後見が開始されます。後見の場合、本人は日常生活に関わる法律行為しか行うことができず、後見人(サポート役)は契約の取消権等の強力な権限を持ちます。
判断能力が著しく低下しているときは補佐が開始され、判断能力が低下しているにとどまるときは補助が開始されます。補佐の場合、本人は保佐人の同意なく重要な法律行為を行うことができなくなります。また、保佐人は一定の事項について代理権を持ちます。補助の場合、本人の状況に応じて必要な限度で補助人の同意権・代理権が設定されます。
●任意後見
任意後見は、本人が十分な判断能力を有しているうちに後見を依頼しておき、後に判断能力が低下したタイミングで後見を開始する制度です。
裁判所が後見人を選任する後見制度とは異なり、本人が信頼できる相手に後見を依頼できるという点はメリットといえますが、後見人に取消権が認められない点はデメリットといえます。
■家族信託・成年後見(任意後見・法定後見)の比較
●資産運用の柔軟性
任意後見・法定後見の場合、後見人の役割は本人の財産を保護することとされ、家庭裁判所や後見監督人による厳しい監視にさらされます。そのため、財産の管理を超えて積極的な資産運用を行うことは難しいというデメリットがあります。
家族信託では、委任契約の内容次第で、柔軟な資産運用を実現することが可能になります。
●身上監護権
成年後見制度には、財産保護に加えて、本人の生活の保護という目的があります。そのため、成年後見人には、本人の生活環境を守る身上監護権が与えられています。これにより、介護や医療に関する契約についても、後見人が行うことが可能になります。
家族信託では、受託者に身上監護権は認められていません。そのため、親の介護・医療について不安があるような場合には、任意後見を利用した方が本人の意思を尊重しやすいと考えられます。
●制度の選び方
以上を踏まえると、財産管理の柔軟性を重視するなら家族信託、身の回りのことについての代理権を重視するなら成年後見制度を選ぶのが良いといえます。また、家族信託と任意後見を併用するといった選択肢も考えられます。
石井・小島合同司法書士事務所では、群馬県高崎市で法務相談を承っております。群馬県や埼玉北部にお住まいの方で、家族信託や相続にお困りの方はお気軽にご連絡ください。